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2011年2月18日 (金)

山羊小屋の奇跡

 それは風邪やインフルエンザが猛威をふるう2月中旬に訪れた奇跡でした。

 私はめずらしく深夜の宿直リレーでこの日朝の勤務をしていました。いつものように5時50分に厨房に入り、当番の子どもと6時15分ころに朝食を並べ、談笑し、準備を促し、登校を見送っていました。

 7時5分ころでしょうか。

 一旦登校したはずの「やのっぽ」(仮名 中3)が、まだ小学生が登校準備している大広間の扉を開けて顔をのぞかしているではないですか。忘れ物でもしたのかな?と思っていると、やのっぽが目を見開きながら一言
「ねえ、山羊小屋に小さなヤギがいる」
というではありませんか。

 やのっぽの一世一代のギャグってふうでもないし、何か仕込んだいたずらのようにも見えません。ですが、山羊小屋にいるねっちゃんは、最初の発情もまだの娘さんだったはず。はず。

 でも。やのっぽが「小さいヤギがいる」というのです。

 「まさか、・・・産んだ?」

 信じられない気持ちのまま、私は言いました。その言葉が合図となり、雪崩をうってこどもたちが駆け出します。おりしも地面はつるつるに凍結しています。しかし子ども達は器用にその氷の上をすべり抜け(アサダマオかおまいら)、階段を見事なステップでくだり(タカハシダイスケかおまいら)、あっというまに山羊小屋にたどりつきました。

 ねっちゃんは、山羊小屋の隣の、鶏小屋にいました。ご存知の通り、鳥インフルの話題が出てより、当方では鶏も合鴨も残念ながら飼っていません。そこはねっちゃんのセカンドハウスとなっていました。うらやましいね、この。

 そのセカンドハウスで、ねっちゃんの足元に子ヤギが一頭。まだ子ヤギは立ち上がってはおらず、体の半分は羊膜でつつまれてたし、ねっちゃんのおしりからはへその緒がだらりとたれさがり、両方の足は血で汚れていました。でも、ねっちゃんはりんと立っていて、どうだといわんばかりに私たちを見ています。こどもたちは目を皿のようにして、その様子、とりわけ生まれたての子ヤギを見ています。子ヤギにもへその緒がついていますが、母ヤギとはつながっていません。どのようにして切れたのか、今となっては見当がつきません。でも、ヤギは家畜とはいえ、野生です。本能の命じるまま、そのようにしたのでしょう。

 壮絶な出産の後でありながら、子ヤギは小さな命をふるわせていました。立ち上がるまで、そんなに時間はかかりませんでした。立ち上がったら、すぐにねっちゃんの乳房に頭をこすりつけ、乳首を探し出し、吸いだすのです。その姿のたくましくも、かわいい、かわいくも、たくましいこと。

 子ども達は後ろ髪を引かれる思いで登校しました。見送り私。

 ねっちゃんのこどもは、すぐに名づけられました。がっちゃんです。理由はまあ、わかるでしょ。初代ヤギが「なみ」、つぎが「あい」、つぎが「つう」、そして「ねっちゃん(本名は、ねん)」です。ちなみにがっちゃん、女子です。

 がっちゃん。

 くそう。

 かわいすぎるぜ。

 それにしても。ヤギの出産には二度ほど立ち会ったことがあるけど(だから人の出産よりたくさん立ち会ってるってことだな)、結構たいへんなものでした。産道からのぞいた手足をぐいとひっぱって世に出したのを見た事もあります。

 だけどねっちゃんは、初めてのお産なのに、自分だけで産んだのです。やのっぽの証言によると、朝の餌やりの時には一頭だったといいます。小さなヤギはいなかったのです。餌やりの時間は6時5分ころです。それから1時間のうちに、ねっちゃんはひとりで産み切り、それから30分でがっちゃんは立ち上がって乳を吸っているのです。

 ねっちゃん、がっちゃん。

 くっそう。

 イカすぜ。

 ・・・にしても。父親は・・・?

 まあ、ねっちゃんをもらったときには、もうご懐妊だったってことなんですね。

 ふすまの食べすぎで太ってると思い、飼料調節してすいません。。でもまさか、妊娠してるなんて思ってないし。

 雪山キャンプでお世話になったガクチョウは
「そこで調節したから、安産だったんじゃないの?」
とコメントされていました。そうかもね。

 なにはともあれ、生まれたのはうれしいしありがたい。

 真冬から春に向けての季節でまだまだ寒いけど、無事育って欲しいと思います。

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