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2010年3月20日 (土)

【第16期記念文集】くずてつ作文「父ちゃんは相談員」全文掲載

父ちゃんは相談員

くずてつ

 

父ちゃんはね。

父ちゃんは、きみたちが生まれる前からずっと、家にはなかなか帰らない仕事をしているんだ。そうはいっても、月のうち半分は一緒に夕飯を食べられるから、まだいい方だと思うんだけどね。

だから、家族一緒にいられることのヨロコビはもしかしたら他のおうちのお父さんより、大きいかもしれない。君たちが生まれる前から、もうずっとこうだからね。

さみしいこともある。残念に思う夜もある。でも父ちゃんはこの仕事が大好きなんだ。それは君たちもわかるだろう?

 

ここの仲間はみんないい人で、父ちゃんはたくさんのいい人に恵まれてきた。mも、siも、soも、みんなここで大きくやさしく強く賢く育ててもらえたと思ってる。

 

だから今、父ちゃんは仲間のみんなの理解と協力を得て、できるだけYくんやSくん、Rちゃんがお母さんと一緒にセンターにいることができるようにしてあげている。仕事のやりやすさ、とは違う、もっと大事なものがきっとあると信じるからだ。

 

気がついているだろう。

 

たとえばYくん。こないだのフットサルの練習では、中学二年生の男の子のキーパーと競り合っていた。Yくんは小学2年生だぞ。そしてあいつ、ゴールも決めてた。アシストは6年生のタロウからの、これ以上ないってくらいきれいでやさしいラストパスだった。でかい子と競り合えるのも、パスが出どころに走りこめるのも、信頼があってこそだよな。

 

Sくんはわんぱくで、にぎやかで、お騒がせだけど、Sくんがいつも何を連れて来てくれる?元気と、明るさだよな。Sくんがくると、みんな迎えに行く。Sくんが笑うと、みんなも笑う。Sくんは幸せ、みんなも幸せ。

 

そしてRちゃんだ。Rちゃんが来てやわらかい顔をするのは、何も女の子だけじゃない。男の子もそうだよな。言葉はまるで通じなくても、でも通じるものはちゃんとある。相手に言葉がなくたって、わかろうとすればわかることができる。悪気のないめちゃくちゃがあって、めちゃくちゃなやさしさがそれを包んで許して溶かす。

 

14人のこどもたちが、ちびっこたちの偉大な兄、姉となってて。その偉大な兄、姉たちが、ちびっこからたくさんの学びをもらって。そして響きあうように育っていく。

 

人は人の中で育つんだ。人は人のなかにいたいんだ。そんなことができるセンターが、父ちゃんは大好きだ。

 

だけど、父ちゃんにはせつないこともある。今日、今、お前たちのそばにいてやりたい、というときに、そばにいてやれないことがある。そんじょそこらのことじゃくじけないお前たちだし、母ちゃんもちゃんとついてくれてるけど、それでも父ちゃんが伝えてやりたい、教えてやりたい、それは今なんだ、ってことを、父ちゃんはいてやれなかったことがある。

 

たとえば、例えば今年の冬。

 

山の村村長に苑生が立候補し、演説文を書き上げる日。父ちゃんはセンター当番で、園生の中で立候補した子の作文指導をしていた。もちろん、最高の作文が書けるように指導した。「父ちゃんはそうするからな」とsoにも言った。soは「わかってる。大丈夫」と言った。

 

また他の日、明日は演説という日。父ちゃんはセンター当番で、園生の立候補者の演説練習を繰り返し指導していた。人の心をつかむ演説ができるよう指導した。「これなら、勝てる」と思うまで練習した。「相手はsoちゃんだよ」と、誰かが言った。ちりっと心が傷んだ。だけど、「オレはセンターの相談員だからな」と笑いながら答えた。きっと、そう答えたこともsoはわかってくれると思った。

 

星飛雄馬と星一徹は、こうだったのだろうか。

 

翌日、演説が終わり、「ねえ、ほめられたよ~」と園生が帰ってきて言った。「すごくいい発表だったて、学校の先生が言ってくれた!」 選挙の結果は後日発表なので、この時点では誰が当選したかわからない。だけど、園生の目は輝いていた。やりきった人が見せる目をしていた。よかったなあと思った。

 

夜うちに帰り、soに同じことを聞いた。soは静かに、「大丈夫だった」と答えてから、ちょっとはにかんだ。満足行く出来だったのだろう。父ちゃんはたいしたことをしてやれなかったが、そうか、大丈夫だったか、と満足したり、でもほんとにそうだったのかと不安に思ったり。

 

結果は結果として受け入れるしかない。それも投票なのだ。でも、小さな学校で、気持ちを奮い立たせて2人は戦った。それを難しい立場でかかわることになり、園生指導に全力を傾け、わが子に何もしてやれなかった父ちゃんだったけど、それぞれがやるべきことをしっかりやって、やりぬいて、そして今を迎えられたことは、きっとよかっんだと思う。

そして何より、小さな学校の選挙戦の渦中もその後も、仲良くしている2人のことを、父ちゃんはものすごく素晴らしいと思っている。感謝している。

 

父ちゃんの仕事は、おまえたちのそばに、いつもいれない、すぐ行けない。でも、どこかでお前たちとつながっていて、今を紡いでいる。

 

 そしてまた思うんだ。14人の園生たちの、お父さんお母さんのこと。兄弟のこと。一緒にいられないさみしさやつらさ、無念さ。わかってここにこどもを出してるとはいえ、簡単に割り切れる気持ちじゃない。

 

 それでもここに園生がいる。そのことを、父ちゃんはうんと強く思ってないといけないって、改めて思ったんだ。

 

 仕事してても、おうちの掃除をしていても、きっと心に浪合の園生のことがある。だからまた一生懸命仕事して、おうちのこともして。

 

 今、できることを精いっぱい。お互いのそれが、見えないつながりを太くして、そして家族を、紡いでる。

 

 父ちゃんは、そう思う。

 

平成22年2月 

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