« 初冬の風物詩とトップリーグ2日目 | トップページ | 個人懇談 »

2008年12月15日 (月)

聖戦4

 <連作モノです。聖戦1 は こちら 、 聖戦2 は こちら 、 聖戦3は こちら です。 >

 9回表、勝ち越すことができなかった近鉄バファローズが守備に向う。

 この当時、パ・リーグは延長の場合、12回まで試合を行うことになっていたが、試合開始から4時間を経過したならば新しいイニングには入らないという規則もあった。熱戦となったこのゲームは時間が随分経過しており、優勝を目指すバファローズは時間との戦いも視野に入ってきている。

 同点では優勝できないバファローズ、少しでも早く、相手の攻撃を終わらせて10回の表に入りたいところだ。
 そんな9回裏に、この試合を「聖戦」の高みに押し上げる出来事が起こる。

 先頭の古川慎一がヒットで出塁。続く袴田英利が送りバントをするが、これを近鉄バッテリーの阿波野と梨田が見合ってしまい、無死一二塁になってしまう。オリオンズにしてみれば、逆転勝利の舞台が整ったかたちだが、バファローズは絶対絶命の危機だ。
 ここで阿波野が二塁へ牽制球を投げる。この球が高めに浮く。ベースカバーに入った大石がジャンプをして捕球、着地しながら走者古川をタッチ。古川はあわててベースに戻ってはいたが、体勢にムリがあったか着塁して一瞬、足が離れてしまう。大石はその一瞬の間にタッチした。二塁累審はアウトの宣告。無死一二塁が一死一塁になったのだから大きい。次打者ゲッツーならチェンジだ。
 しかしここで有藤監督が猛抗議に出る。つまり、大石が古川を押し出したじゃないか、ということだ。
 遠くからならそう見えなくもない。しかし、テレビ中継で見た者はあきらかにそうでないことを知っている。一番近くで見ていた審判も迷わずジャッジしているし、判定は正当なものだった。しかし、有藤監督には本当に大石が押し出したように見えたのだろう。オリオンズにしてみれば、サヨナラのチャンスがなくなってしまうのだ。それも対バファローズ10連敗を阻止する貴重なサヨナラだ。実直頑固な有藤道世、まったく引くことなく、抗議を続ける。
 近鉄バファローズにしてみれば、これはたまらない。一刻も早く9回裏を終わらせたいのだ。時間制限の4時間まで、残り30分はとうに切っている。攻撃の回数は、あと2回か。しかし抗議が長くなれば10回の攻防のみ、つまりあと1回しか攻撃ができないことになる。
 有藤監督の抗議は続く。「いいかげんにしろ~」という罵声が飛ぶ。球場は騒然となる。仰木監督が審判に何か言っている。この抗議時間は試合時間に含まれるのか、という確認だ。残念ながら、含まれる。バファローズナインは、守ることも攻めることもできない時間を、どんな気持ちで待っていたのか。
 抗議は、結局9分間続いた。監督が審判に抗議する権利はもちろんあるのだが、しかし一度下された判定が覆ることはない。このゲームの、この瀬戸際での9分の大きさは計り知れない。時間と戦う近鉄バファローズにとって、そして多くの野球ファンにとって、あるいはもしかすると野球そのものにとって、この抗議は「受難の9分」となり、後世に語り継がれることになる。

 一死一塁から試合は再開された。待たされた阿波野がまともでいられるはずがなく、二死までこぎつけるものの満塁と攻め立てられる。打者は愛甲。
 愛甲の打球はレフト前に飛ぶ。落ちればサヨナラ、バファローズの夢は砕かれる。左翼手淡口憲治が懸命に前進、滑り込みながら地面すれすれで捕球。またしてもファインプレイ。残す1回だけの延長戦に、かろうじて夢は繋がった。

 延長10回表。時間制限の4時間はもうすぐそこに迫っている。バファローズの攻撃は、事実上この回だけとなろう。3つのアウトを数えるまでに、一度でいい、ホームを陥れてほしい。生粋のオリオンズファンと優勝を争っているライオンズファン以外は、皆そう思っていたのではないか。
 先頭打者は今日本塁打を放っている主砲、ラルフ・ブライアント。
 長打を狙って強振するブライアントだがわずかにミスショット、ゴロのボールはセカンドへ。溜息の中一塁に走るブライアントだが、しかしベースカバーに入った投手・関清和がなんと後逸。バファローズを押す強運はまだ生きていた。すかさず代走に安達を投入。

 続く打者はオグリビー。しかしオグリビーだったところが難しかったか。

 この場面、送りバントで一死二塁のカタチが欲しかった。仰木監督は「仰木マジック」という言葉が示す通り奇策を用いることが多かったが、それは選手起用に関することで、戦略的には「送りバント」のようなオーソドックスな作戦を嫌ってはいなかった。その証拠に新井も大石も、仰木監督が就任した今年の方が昨年より犠打の記録数が増えている。しかしさすがにオグリビーに送りバントを命じるわけにはいかない。彼が送りバントを成功させる確率と、彼が普通に安打を放つ確率なら、後者の方が高いに決まっている。
 オグリビーで勝負。しかし結果は、空振り三振。これで一死一塁。
 バッターボックスには羽田耕一が入る。

 -羽田はこの場面、迷いがあったという。普通に勝負か、あるいはセーフティ気味の送りバントをしようか、ということである。バッターボックスに入る時間を遅らせて考えをまとめたいところだったが、しかし、時間の制約にあせる気持ちも抑えられない。背中を押されるようにバッターボックスに入る羽田。
 そこへ、初球、ストライクが来た。羽田のバットが反射のように動く。「迷いながらでいい結果がでるわけがない」と羽田が後に述懐するが、打球は無情にもセカンド西村の正面へ。西村、自らセカンドベースを踏んで二つ目のアウト、そして一塁に送球。羽田、懸命に走りこむが、しかしボールはファーストミットにきれいに収まる。アウト。スリーアウト。

 残る時間は3分。3分で相手の攻撃は終わらない。近鉄バファローズの1988年の攻撃はすべて終了してしまった。奇跡の追い上げもここまで。逆転優勝の夢は潰えた。

 しかし、バファローズナインは守備につかなければならない。試合終了の声を聴くためだけに、守備をしなければならない。

 この回マウンドを任された加藤哲郎は、審判に投球練習はいらない、すぐやらせてくれ、と懇願、擦り切れてしまった夢を必死につなぎとめようとした。しかし残念ながら、ロッテオリオンズの攻撃が3分で終わることはなかった。

つづく)  

 
 
 
 
 
 

|

« 初冬の風物詩とトップリーグ2日目 | トップページ | 個人懇談 »

コメント

そーなのよ。
前に「聖戦は仰木監督のイメージがない」って書いたけど、
やっぱ、聖戦で監督と言えば、有藤監督。
あの不条理な抗議ですね。

☆嫌がらせに近いものがあった☆

投稿: おおくぼ | 2008年12月16日 (火) 17時01分

でもさ、聖戦5で書くつもりなんだけど、あれがあったからこその、あの試合なんだよねーと思っちゃうわけなんですよ。
ところでオレ、Visuta Questのトイデジ、買っちゃいました!
モノ到着はまだなんですが、わくわくしてます。

投稿: くずてつ | 2008年12月19日 (金) 10時39分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/66200/26202615

この記事へのトラックバック一覧です: 聖戦4:

« 初冬の風物詩とトップリーグ2日目 | トップページ | 個人懇談 »