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2007年11月22日 (木)

元祖むらさき観戦記16

エピローグ

 翌日、大分は市原と引き分けた。大分が先制したのだが、優勝争いに絡みたい市原がなんとか同点に追いついた。これでサンガの今節での降格は免れた。
 しかし、サンガが残留するためには、最終節で仙台が大分を下し、サンガがG大阪に5点差以上の大差で勝たないといけないという状況になった。もし大分が勝つと、自動的にサンガと仙台の降格。両者ドローだと、サンガは18点差以上の大差で勝たないと降格という、まず実現不可能なケースを要求されることになる。もっとも、5点差以上の勝利でさえ、決定力不足のサンガには無理に近い数字だが。
 大分と市原が引き分けたこの日、アルビレックス新潟が念願のJ1昇格を果たした。J2からはもう1チーム、サンフレッチェ広島がすでにJ1への切符を手にしている。これら2チームの昇格と交換でJ2に降格するチームは、最終節で決まる。。
 サンガはその最終節、5トップとも思われる超攻撃的布陣でG大阪に挑むが、結局1対5の大差で破れ、J2降格が決定する。サンガ唯一の得点をあげたのは、やはり黒部光照だった。
 注目の大分対仙台は、1対1と決着がつかなかった。
 その結果、最終節までもつれた残留争いは、京都パープルサンガとベガルタ仙台の降格という結果で終わった。私たち家族は、南信州の森の中で、その結果を知った。
 
 それから半月後の日曜日の午後。私は息子ふたりと、父の4人で、再び西京極のホームゴール裏に座っていた。天皇杯3回戦、対サンフレッチェ広島戦である。閑散とした観客席は、わずか3000人程しかいなかった。
 J2降格のチームからは、主力の選手が移籍することが多い。たとえば横浜F・マリノスのFW久保は、昨シーズンまでサンフレッチェ広島にいた。広島がJ2に降格したため、J1チームのマリノスに移籍したのだ。J1とJ2では、レベルの差もさることながらマスコミへの露出度が違うし、何より日本代表へのアピール度が違う。かつてのカズもそれを理由にサンガを去った。
 ということは、黒部も、松井も移籍の可能性が大ということである。ならばこの一戦は、黒部と松井がいるサンガの、最後のゲームになるかもしれない。・・・そう思うと、対神戸戦で得た天皇杯のチケットがとてもありがたく思え、いてもたってもいられない気持ちで当日を迎えた。
 この試合は勝てると見込んでいた。キーパーは平井、イム・ユファンがセンターバック、MFにはビジュ、鈴木慎吾、松井大輔、そしてFWに田原と、それから黒部光照。
 「平井だ」
 「黒部だ」
息子達が目を輝かせる。
「よう見とけよ」
私は息子達の肩を抱き寄せながらそういった。愛機EOS3のファインダーの中で、平井はファインセーブを連発し、黒部は信じられない跳躍を見せ、松井は相手のマーク2枚を引き連れて左サイドをドリブルで展開していった。
  西京極からは愛宕山が見える。比叡山も見える。風がスタジアムの中を走り抜ける。
 試合は、0対2でサンフレッチェ広島が勝った。サンガは昨年制した天皇杯でもふるわなかった。チームの勢いの差が出たのか。
 しかしそんなことはもうどうでもよかった。
  夕方の優しい光線に、父と息子が照らされて歩いている。なにやら話しをしている。私は歩きながら、仕事で来ることができなかった妻にメールで試合結果を伝えている。その横を阪急電車が鈍い光を照り返しながら走ってゆく。
 そんな情景の中で、私はなんだか満足していた。私と私の家族は、サンガを通して何かとても大切なものを得た気がした。
「京都パープルサンガを応援してよかった」
私は冬の空を見上げた。
                                                                        (了)

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