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2007年11月21日 (水)

元祖むらさき観戦記15

その6

 ラッキーボールを景品に換えてもらうため、私達は総合案内所に向かった。ラッキーボールは、森勇介選手のサインが入ったサンガ・タオルと、12月中旬に予定されている天皇杯のサンガ戦のペアチケットだった。
 しかしそれらをゲットしたことよりうれしかったのは、忘れ物、落とし物のコーナーに下の息子のなくなったカバンがあったことだ。スタッフの人に申し出てそのカバンをとってもらう。中身をあらためて見たが、何もとられた形跡はない。財布もお金も無事だった。
 それにしてもヘンな話である。なくなったカバンは、間違いなく私達の荷物と一緒においてあったのに、どうしてそのカバンだけ落とし物として届けられていたのか。置き引きにあったとしても、中身に何も手をつけていないのはヘンだ。そもそも落とし物コーナーに持ってくる必要もあるまい。
 考えても答えが出そうにない。だが息子は、にこにこしている。サイン入りタオルもチケットも獲得できた上に、カバンまで見つかったのだから、うれしさ満開である。
  妻や父母、義妹とは総合案内所で一旦別れた。妻が運転するクルマで父母たちを一時家に送り届け、それから私達を迎えに来る手はずになっていた。
 私はちょっとした気まぐれをおこし、球技場の反対方向に歩き始めた。
「どこいくの?」
下の息子がきく。
「うん、ちょっとね」
私とて当てがあるわけではないが、ホームゲーム最終戦にふさわしい私の幕切れを求めていたのかもしれない。
 少し進むと、アウェイ側出入り口に人がたまっていた。どうやら、神戸の選手を乗せたバスを見送ろうとしていたようだ。神戸のユニフォームやチームタオルを身につけた人たちがたくさんいる中、紫の「絶対J1」Tシャツを着て歩くのは少々緊張した。しかし私はまた気まぐれをおこし、神戸のファンのかたまりの中で歩みをとめた。
 私のすぐ目の前に小学校5.6年生くらいの女の子がふたりいた。ひとりはカズのユニフォームを着ており、もうひとりは岡野のユニフォームを着ていた。ふたりと目があった私は、
「いやあ、負けちゃったよ」
と声をかけた。彼女らはうれしそうに笑った。
「でも、京都強かったです」
カズのユニフォームを着ていた女の子が答えてくれた。
「0対2だもん、完敗だよ。神戸の方が強かったよ」
私は答えた。彼女らは顔を見合わせて、また笑った。
「神戸から応援に来たの?」
私は訊ねた。
「はい。電車ですぐだから」
近くには彼女のお母さんらしい人がいた。
「そう、気をつけて帰ってね」
私がいうと、女の子は
「はい、ありがとうございます」
と答えた。女の子のはきはきした態度に、私は好感を持った。うちの息子はどうだろうか、そんなことが頭をよぎった。
「それじゃあね」
私はそういって歩き始めようとした。すると、私の気持ちを察したかのように、上の息子が
「さようなら」
下の息子が
「おやすみなさい」
といった。お、なかなかやるな、と私は思った。女の子も「さようなら」「おやすみなさい」をそれぞれが言ってくれた。その時、神戸の選手を乗せたバスが目の前を通り過ぎた。女の子たちは私たちに一礼してからふりかえり、大きく手を振りながらバスにむかて駆けだした。

 しばらく歩くと、球技場の正面玄関についた。そこにも人だかりができていた。やはり、選手を乗せたバスが目当ての人たちだろう。
「バスが出ます、みなさん、危険ですから走らないでください。バスに近寄らないでください」
警備員の若者がハンドマイクで繰り返し注意を呼びかける。しかし、バスの姿が見えると、黄色い声と同時に一斉に人が走り出す。
「走らないで下さい、危険です、バスに近寄らないでくださーい!」
警備員の若者も悲痛な声をあげる。しかしまるで効果はない。
「ったく・・・あぶないっちゅうねん」
若者はハンドマイクを口から離し、ぐったりした表情でそうつぶやいた。
「これは危ないよなあ」
私は若者の後ろから、彼に聞こえるように言った。彼は振り返って私を見た。
「たいへんですね」
私は彼にそういった。彼はちょっと恥ずかしそうに鼻の頭をかいた。
「ご苦労様です」
私はそういって、その場を離れようとした。警備員の若者は、なぜか
「お疲れさまでした」
といって頭を下げてくれた。私とのちょっとしたふれあいが、彼にそういう気分にさせたのだろうか。

 西京極総合運動公園の西側の門から北に向かって歩き、ややあって右折しつらつらと天神川通りを目指す。よく利用する阪急「西京極」駅の人の多さとは対照的に、こちらはそれほどでもない。
 天神川通りをゆくクルマのライトに照らされながら、私達親子は歩く。
「負けちゃったなあ」
私が、誰にいうでもなく、いう。
「平井がキーパーだったらなあ」
上の息子がいう。
「明日、大分が勝ったら、京都J2?」
下の息子はそのことがとにかく気がかりなようだ。
「うん。でも、直接対決3連敗じゃ、だめだよな」
「けど、ジュビロには勝ったよ」
上の息子がサンガを弁護する。
「そうだよな、ジュビロに勝ったんだよな。市原にも勝ったんだよな。で、横浜とか鹿島とかFC東京とか、優勝争いしているチームと引き分けてるんだよな。なのになんで残留争いしてるチームに負けちゃうかなあ」
と私。
「黒部が大分戦でPKはずしたから?」
下の息子。
「けど、そのおかげで市原に勝ったと思うよ」
これは上の子。
・・・・
 息子達とこうした道行きははじめてかもしれない。どこまでも歩いていきたい、そんな気がした。

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