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2006年2月20日 (月)

僕が通年合宿の仕事をしているわけ③

その②の続きです。



 大学を卒業して野外教育団体に研究員としてひろわれた僕は、飯田にやってきた。すまいは清内路村で、村営住宅をお借りしてくらした。研究員という肩書きだが、やつている内容はむしろ「研修生」といった方がよく、オン・ジョブ・トレーニングののりで、短期自然体験キャンプの企画・管理・運営のお手伝いが主だった。研究といえば、キヤンプの評価アンケートの改良と、
今までのキャンプの事例のまとめをやったくらいである。
 同期に、
大久保というおもしろい男がいて、この男と酒を飲むことがこの頃の無上の楽しみだった。大久保は千葉県出身の男で、とにかく愉快な奴だ。彼は切れ時鋭い頭脳とデザイナーとしての優秀な才能を持っていた。彼はその後デザイン会社を興すのだが、それはまあ、別のお話。

 事務所での仕事は朝8時30分から。夕方6時から2時間程度、糊口をしのぐために塾の講師をやり、9時からまた事務所に戻って仕事した。帰りはたいてい年前様。それから僕の家か大久保の家で一杯やって、そして眠る。そんな毎日だった。
 キャンプのパンフレットづくりや会員向けの新聞を作る仕事はとりわけ楽しかった。大久保とのコンビが小気味よかった。おおざっぱだけど早い僕の仕事と、時間はかかるけど緻密な彼の仕事。文章もイラストもその特性がはっきり出た。違いがあるから組む意味があることをこの時知った。
 大久保は飯田のデザイン会社のアルバイトもしており、彼がデザインした焼き肉屋の看板は、
しばらくアップルロードの中心付近に立っていた。
 パソコンの操作を覚えたのもそのころだ。ウインドウズなんて便利なものはまだウチの事務所には導入されておらず、キヤンプの班分けやアンケート集計も、自分でプログラムを組んでやっていた。視力を落としたね。体重も増えたぞ。ちぇ。

 それらの仕事はおもしろかつたしやりがいもあつた。しかし、事務仕事が多かった。それは仕方のないことなのだが、事務仕事ばかりやりにきたんじゃないぞ、という逮和感が、少しずつ僕の胸に広がっていったのも事実だった。
 僕は、こどもといっしょにいる現場が、とにかく好きなのだ。
 僕の企画したキャンプで、気球を空にとばそうというものがあった。春、GW、夏の3つのキャンプでプロセスを構成し、目的を達成しようというキャンプで、キャンプを構成するメンバーは大人もこどもも固定されている。気球のモデルづくりから実験を繰りかえし、だんだん大きな気球をつくって、最終的には3年生のこどもを宙に浮かそうというプラン。
 みんな夢中になった。大人もこどもも一生懸命だった。だから、遊ぶ時も集中して遊び、寝る
時も集中して眠った。最終日の朝、気球が大きく膨らみ、パイロットのこどもが宙に浮遊する瞬間を見ようとみんながそれぞれの持ち場で必死に働いたが、しかしその夢は叶わなかった。身代わりに、もう少し軽い人形を気球につけた所、気球はふわりと浮き始めた。間違いなく、空に昇ってゆく。少ししてから安全紐を引き、ゆっくりと地面におろす。おだやかに着地する人形。はじける歓声。あちこちで握手がかわされる。
「くず、来年もやろうよ、僕、また来るからさ」
僕の服の裾を掴んで、パイロツトの少年がいう。彼は、飛びたかったのだ。
 後から聞いた話だが、その少年は少しでも身軽になるようにと、前日の夕食はほとんど食べなかったらしい。悪いことをした、なんで気づかなかったんだろうと僕は後悔した。
 こんな感じの現場が、僕は大好きだったのだ。
しかし、現場をつくるためには裏方がいる。キャンプはその準備と総括が重要で、現場はその間にはさまれた夢のような時間、という言い方もできる。
 準備に費やす時間が圧倒的に長い。およそ2ヶ月の現場シーズンのために10ヶ月を要するのだ。これがオレの生きる道だし、と覚悟を決め、受け入れようとした時、ひとつの話が舞い込んだ。

「松川町生田(いくた)地区で通年合宿をやりたがっている。その事業を担当できる人間が欲しいので、その面倒をみてくれ」
という話だ。

 僕がいた団体は通年合宿のソフトを持っていた。また、泰阜村で既にひとつの通年合宿事業を展開しており、僕もかなり強い関心を寄せていた。団体の先輩がそこで担当者をしており、こどもと暮らす中で、定住型の自然体験と共同生活体験を試行錯誤しながら展開していた。学校教育と、家庭教育、それから社会教育を融合させたカタチの取り組みだ。イギリスのパブリツクスクールを連想させる事業だと当時の私は思った。
 松川町生田は過疎地域である。松川町自体は大きな町だが、生田地区は当時でも小学校が全部で50人程度。複式学級の誕生は目の前だった。中学は地区にはなく、町にひとつあるだけである。
(つづく)

 関係ありませんが!
 松井大輔選手がフランスのリーグ・アン(一部リーグ)で月間MVP獲得!うれしいじゃないですか。トリノオリンピックで苦戦が続く中、サッカーは好調。先日の国際親善試合、日本対フィンランドも、左サイドの村井の活躍は目覚しかったし、久保の動きもよかった!(今期J1開幕戦で我がサンガはマリノスとあたっちゃいますが・・・) 佐藤寿人と右サイド駒野のコンビもよかったし、なんといっても小笠原のおよそ60メートルのループシュート!!ジーコも「ペレ、マラドーナクラスのシュートだ」と絶賛してました。スゴイ!
 でもやっぱ松井大輔がスゴイ(笑) 

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