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2006年2月24日 (金)

僕が通年合宿の仕事をしているわけ⑤

3日ぶりの連載(?)です。その④の続きです。


 僕は松川町の通年合宿の現場を去った。短期キャンプの仕事に専念するようになった。松川の現場には門野(旧姓・星)も池延(前号に登場した、もうひとりのスタッフ)も残ってくれていたので、不安はなかった。しかし、短期の仕事の方は、難しい局面を迎えていた。バブル崩壊の影響で、キャンプの参加者減が著しくなっていたのだ。
 右肩下がりの業績は、キャンプが主な収入源である僕の職場においては大打撃である。給料の未払いも発生していた。昇給してもらったものの、しかし未払いではいいことなんてない。
 結婚式を6月に控え、切り詰める日々が続いた。

 当時の職場では毎年年度初めに関東方面と中京方面の役所・図書館などにキャンプ広報の営業に出た。中京方面は1,2日で一気に回ってしまうのだが、関東方面はそうはいかない。1週間は必要だった。経費削減で新宿のカプセルホテルを連日利用し、カルキ臭い風呂に入って汗を流し、マクドナルドや駅そばで腹をみたして歩き回った。結婚式はまじかに迫っていたしお金もなかったが、しかし夜は東京ドームや神宮球場に通った。安い外野席のチケットを買い、すきっ腹をだましつつ、ゲーム観戦に没頭した。
 ドームのなんだか不自然な明るさは野球とは縁遠い感じがしてあまり好きになれなかったが、天候に左右されず野球観戦ができるという点だけはありがたかった。しかしその点、神宮球場はいい。やはり野球は、野外スポーツだ。風がふき、雨がふり、デーゲームでは太陽がふりそそぎ、夕方ともなれば西日がさす。それが野球の重要な要素で、それがない野球などなんだかテレビゲームみたいで、なんだかごっこ遊びみたいで、「野球」と呼ぶには抵抗すら感じる。

 閑話休題。

 この年だったか。読売ジャイアンツ対中日ドラゴンズというカードを、東京ドームで観戦した。ゲームは白熱、延長戦に突入した。
 僕が贔屓にしていた選手に、落合博満という男がいる。彼はこの年ジャイアンツのユニフォームを着ていた。私はジャイアンツファンではなかったが、落合がいた3年間だけジャイアンツファンだった。この日も落合見たさにドーム球場に行ったようなものだ。
 落合はこのゲームでは右前にヒットを放っていた。延長のこの場面、打順はクリーンアップにまわってくる。僕は落合がサヨナラ安打を放つことを期待した。しかしそれは叶わなかった。主砲落合の前を打つ3番松井秀喜が、ライトスタンドで観戦していた僕の頭上をはるかに越す見事なサヨナラ大ホームランをかましたからだ。度肝を抜かれた一発だった。ものすごい打球のスピードだ。これはスタジアムで観戦しないとわからない。僕は落合が得意の右打ちで放り込む打撃を堪能したくてライトスタンドに座っていたのだが、おかげで松井のこの一撃を最も迫力ある場所で見ることができた。しかし、ドームのおかげで場外ホームランを見られなかった、ということについての不満は拭い去れず今もある。ともあれこの一撃以降、私は松井を注目し続けている。
 野球はいい。一瞬の残酷さと恍惚感は、他のスポーツにない魅力である。・・そんなことを思いながら、空腹のままカプセルホテルに向かった。
 僕の独身最後の春は、こんな調子だった。
(つづく)

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